AI時代の暗号資産セキュリティ──自己保管・復旧・Midnightが描く新しい保護モデル

【概要】

Charles Hoskinson氏は、Coldcardハードウェアウォレットのファームウェア上の欠陥が関係したとされる大規模なBitcoin流出事例を起点に、AIによって暗号資産への攻撃能力が急速に広がっていると語りました。重要なのは「どのウォレットが絶対に安全か」を探すことではなく、保有額(Value at Risk)に応じて、認証・保管・復旧の仕組みを段階的に強化することだとしています。

特に高額な自己保管では、異なるベンダーや技術を組み合わせる「マルチモーダル・マルチシグ」が有力な選択肢になるとの見解です。またMidnightでは、プライバシーを守りながら、必要な場合にのみアイデンティティと資産の関係を証明し、保険や資産復旧につなげる仕組みを目指していると説明しました。

【解説】

🔹 Coldcard事例が示す「ハードウェアウォレットでも万全ではない」現実

Hoskinson氏は、Galaxy ResearchがColdcardのファームウェア上の欠陥と関連付けたとするBitcoin流出事例に言及しました。ある報道によれば、攻撃者は41分間で1,196のBitcoinアドレスから約1,000BTC(当時約7,000万ドル相当)を移動させたとされています。

同氏は、この問題の原因となった実装上の不備は2021年頃に生じたとの見方を示しました。また被害者について、秘密鍵をコールド環境で管理し、リカバリーフレーズも分離して保管するなど、本人たちなりの適切な対策をしていた可能性を指摘しています。

しかし、オフラインのハードウェアウォレットであっても、デバイスのファームウェア、チップ、鍵生成、復旧手段、連携ソフトウェアなど、セキュリティを構成するどこか1つに弱点があれば、被害につながる可能性があります。同氏は、このような被害について安易に利用者を責めるべきではないと強調しています。

ハードウェアウォレット

秘密鍵をPCやスマートフォンから分離し、専用デバイス内で保管・署名するウォレットです。秘密鍵をオンライン環境に置くホットウォレットより安全性を高めやすい一方、製品選びや設定、復旧方法を含めた全体設計が重要です。

🔹 AIが変える攻撃者側の「知識」と「忍耐力」

従来、高度な暗号資産ハックには、暗号技術、ソフトウェア解析、ファームウェア、ネットワーク、スマートコントラクトなどに関する専門知識が必要でした。そのため、攻撃を試みる人は多くても、複雑な脆弱性を発見して悪用できる人は限られていた、というのが同氏の見方です。

一方、生成AIやAIコーディングツールの進展により、攻撃者はコード、GitHub、ブロックチェーン上の取引、暗号ライブラリ、デバイスのファームウェアなどを長時間にわたって調査させられるようになりました。AIは疲れずに大量の候補を分析し、弱点を探し続けられます。その結果、これまで専門家に限られていた攻撃能力が広がる懸念があると同氏は述べました。

ファームウェア

ハードウェア機器の内部で動作する基本ソフトウェアです。ハードウェアウォレットでは、秘密鍵の管理や署名処理に深く関わるため、ファームウェアの安全性は重要な要素です。

Project Glasswing

Hoskinson氏が以前に言及したプロジェクトまたは問題提起です。原文では、AIが長時間にわたってシステムを解析し、新たな攻撃経路を見つける可能性を示す文脈で「Project Glasswing」に触れています。具体的な内容・実態は原文のみでは確認できません(※要確認)。

🔹 最初に考えるべきは「失って困る金額」

同氏が繰り返し示した中心的な考え方は、保有額に応じてセキュリティ戦略を変えるべきというものです。数ドル程度の資産と、数千ドル、数百万ドル規模の資産を同じ方法で管理するのは合理的ではないとしています。

少額であれば、ブラウザウォレット、デスクトップウォレット、取引所口座など、利便性を優先した管理も選択肢になります。ただし、保有額が増えるほど、専用ハードウェア、複数署名、専門カストディ、保険、相続・復旧手段などを組み合わせる必要が出てくる、というのが同氏の主張です。

Value at Risk(リスクにさらされている資産額)

事故・盗難・紛失などが起きた場合に、失う可能性がある資産額を指します。暗号資産の保管方法を考える際、この金額を基準に対策のコストや手間を判断する考え方です。

🔹 自己保管と第三者保管、それぞれのトレードオフ

暗号資産の保管には、大きく自己保管と第三者保管があります。自己保管では、利用者自身が秘密鍵を管理するため、資産を直接コントロールできる一方、鍵の紛失、盗難、設定ミス、相続対応などの責任も自ら負うことになります。

第三者保管では、専門事業者が鍵管理、複数承認、コールドストレージ、運用手順などを提供する場合があります。Hoskinson氏は例としてBitGo、Fireblocksなどを挙げ、第三者カストディ事業者は一般に、複数当事者計算(MPC)、異種のバックエンド、ホット/コールドストレージ、運用プロセスなどを組み合わせると説明しました。各社の実際のサービス内容、監査・保険の有無、補償範囲は個別に確認が必要です(※要確認)。

また同氏は、多くの利用者が資産を取引所に置いたままにしており、取引所が事実上の第三者カストディアンになっていると指摘しました。自己保管を広く普及させるには、安全性だけでなく、日常利用の分かりやすさや復旧のしやすさも欠かせません。

自己保管(Self-Custody)

利用者自身が秘密鍵または復元フレーズを管理し、第三者の許可なしに資産を動かせる保管形態です。「Not your keys, not your coins(鍵を持たなければコインも自分のものではない)」という考え方と結び付けて語られることがあります。

第三者保管(Custody)

カストディともいう。暗号資産の秘密鍵や資産へのアクセス権を専門事業者など第3者が保管・管理することです。

🔹 高額な自己保管では認証要素を増やす(多要素認証)

一定額以上を自己保管する場合、Hoskinson氏は「知識」「所持」「生体情報」という3種類の認証要素を組み合わせることを基本にすべきだと述べました。具体例は以下の通りです。

  • 知識:PINコード、パスワード
  • 所持:ハードウェアウォレット、セキュリティカード
  • 生体情報:指紋・顔認証などの生体認証

同氏は、ハードウェアウォレットを選ぶ際に、認証の有無、製造元、運用実績、ソースコードの公開状況などを確認すべきだと語りました。例としてLedger、Trezor、Arculusを挙げています。

ただし、原文でもLedgerやTrezorについては主に「デバイス」と「PINコード」が言及されており、すべての製品が生体認証を含む厳密な3要素認証を提供するという意味ではありません。実際の認証方式や対応資産は、製品ごとの公式情報で確認が必要です(※要確認)。

多要素認証(Multi-Factor Authentication)

「知識」「所持」「生体情報」のように、性質の異なる複数の認証要素を求める仕組みです。パスワードだけに依存するよりも、不正アクセスへの耐性を高めることができます。

🔹 高額資産の自己保管では「マルチモーダル・マルチシグ」

保有額が大きくなる場合、同氏は単一デバイスに依存せず、複数署名を使うべきだと主張しました。たとえば「5つの鍵のうち3つの署名がそろえば送金できる」という3-of-5の構成にすれば、1つの鍵が侵害されても、直ちに資産を失うとは限りません。

さらに同氏が重視するのが「マルチモーダル」、すなわち異なるメーカー・異なる技術基盤のデバイスを組み合わせることです。たとえば、1つの鍵をLedger、別の鍵をTrezor、さらに別の鍵をArculusで管理すれば、特定メーカー固有の脆弱性が見つかった場合にも、すべての鍵が同時に危険にさらされる可能性を抑えられるという考え方です。

Hoskinson氏は、ハードウェアをバックエンドに異種構成で組んだマルチモーダル・マルチシグが、デバイス自体の欠陥によって破られた事例を自身は知らないと述べました。ただし、これは同氏の認識であり、網羅的な統計や安全性の保証を意味するものではありません(※要確認)。

マルチシグ(Multisig)

複数の秘密鍵による承認を必要とする仕組みです。「M-of-N」は、N個の鍵のうちM個の署名が必要であることを意味します。たとえば3-of-5では、5個中3個の鍵がそろわなければ送金できません。

マルチモーダル・マルチシグ

複数署名に加え、異なるベンダー、異なるデバイス、異なるソフトウェアや運用環境を組み合わせる設計です。1種類の製品や1社の障害・脆弱性に依存しないことを目指します。

🔹 オンチェーンのマルチシグには別のリスクもある

マルチシグであれば何でも安全というわけではありません。マルチシグの仕組みがスマートコントラクト上に構築されている場合、デバイスや秘密鍵が安全でも、スマートコントラクト自体のバグや脆弱性が問題になる可能性があります。

Hoskinson氏は、Ethereum上のParityマルチシグを例に、オンチェーンのスマートコントラクトを用いる構成では、コントラクト側が侵害されるリスクがあると述べました。原文では、この事例を「Polkadot ecosystem」とも関連付けていますが、具体的な時期や技術的経緯は原文だけでは確認できません(※要確認)。

そのため、利用しているマルチシグが完全にオフチェーンで管理されるものなのか、オンチェーンのスマートコントラクトを用いるものなのか、あるいは両者を組み合わせたものなのかを理解する必要があります。セキュリティは「最も弱い部分」で決まるため、鍵の管理だけでなく、送金承認までの経路全体を確認することが大切です。

オンチェーン / オフチェーン

オンチェーンはブロックチェーン上で直接実行・記録される処理、オフチェーンはブロックチェーンの外で行われる処理です。オンチェーンの仕組みは透明性が高い一方、スマートコントラクトの欠陥がリスクになることがあります。

🔹 Midnightが目指す「アクセス制御」だけではない保護

従来の自己保管は、基本的に「不正な人を入れない」ためのアクセス制御に重点が置かれてきました。つまり、秘密鍵、PIN、生体認証、デバイス、マルチシグなどを用いて、資産を動かせる人を限定する発想です。

しかし、万が一侵害が起きた後には、「本来の所有者が誰か」を証明することが難しいという問題があります。秘密鍵を盗まれると、攻撃者も正規ユーザーと同じように署名できてしまうためです。

Hoskinson氏は、Midnightではプライバシーを保ちながら、資産アドレスと利用者のアイデンティティを必要に応じて結び付け、所有者であることを証明できる仕組みを目指していると説明しました。これは、資産を常に実名とひも付けるのではなく、問題が起きた際にのみ必要最小限の情報を提示する「選択的開示」を可能にする構想です。

ただし、こうした仕組みが実装済みか、どの資産・ウォレット・法域で利用できるのか、また不正送金後の実際の資産回復を保証するものかは、原文だけでは確認できません(※要確認)。

ZK(ゼロ知識証明)

ある事実が正しいことを、詳細な秘密情報を明かさずに証明する暗号技術です。Hoskinson氏は、Midnightのプライバシーおよび選択的開示の基盤となる技術としてZKに言及しました。

🔹 プライバシー保護型の保険・復旧という可能性

アイデンティティと資産の関係を、プライバシーを保ったまま証明できるようになれば、自己保管向けの保険や復旧サービスを設計しやすくなる可能性があります。たとえば、不正送金の被害を受けた利用者が、必要な時だけ「このアドレスの正当な所有者である」と証明し、保険請求や復旧手続きに進む形です。

同氏によれば、保険を成立させるにはリスクを測定し、適切に価格設定できなければなりません。そのため保険会社は、認証基準、ハードウェアの認証、運用実績、セキュリティ標準などを市場に求めることになり、結果として業界全体の安全性向上を促す可能性があるとしています。

ただし、これはMidnightが目指す方向性・将来構想です。実際の保険商品、補償範囲、法規制への対応、復旧プロセスなどには、技術面だけでなく事業面・制度面でも多くの検討が必要です。

🔹 MPCとリカバリーで、自己保管の弱点を補う

高度な資産管理サービスでは、複数の当事者に鍵管理や署名処理を分散するMPCが使われることがあります。Hoskinson氏は、Midnightの技術スタックにMPCを取り入れることで、自己保管と第三者カストディの中間に位置するハイブリッドなモデルも可能になると述べました。

また、資産を安全に守るだけでなく、事故、病気、パスワード紛失、相続などに備える「復旧」も重要です。復旧サービス、ソーシャルリカバリー、暗号化したバックアップなどは便利である一方、新たな攻撃経路にもなり得ます。強力なマルチシグを導入しても、復旧経路が弱ければ、全体の安全性はそこまで引き下げられてしまいます。

MPC

マルチパーティ計算:秘密鍵そのものを一つの場所に存在させず、複数の「シェア(断片)」に分割して、異なる当事者(人、サーバー、デバイスなど)がそれぞれ保持します。署名(トランザクションの承認)が必要なときは、各当事者が自分の持つシェアを使って計算に参加し、秘密鍵そのものを一度も復元・結合することなく、有効な署名を協調して生成します。

🔹 バックアップは「最後の鍵」になる

同氏は、Laceに関して開発したとするPGP暗号化ペーパーウォレット機能の例にも触れました。通常は紙に書き留める24語のリカバリーフレーズを、PGP鍵で暗号化した状態で出力・印刷する仕組みであり、印刷後の紙面が流出しても、対応する秘密鍵がなければ復元内容を利用しにくくするという考え方です。

また同氏は、2020年にX(当時Twitter)上で、PGP暗号化された自身のペーパーウォレットを公開し、「解読できれば取得してよい」とする企画を行ったと説明しました。そこには100万ドルを入れたと述べていますが、実際の資金額、現在の残高、誰も取得できなかったという結果があります。

重要なのは、バックアップや復旧方法もセキュリティチェーンの一部だということです。デバイスを守れていても、リカバリーフレーズがそのまま写真、クラウド、メール、メモアプリなどに保存されていれば、その部分が攻撃対象になり得ます。

PGP

公開鍵暗号方式を用いて、データの暗号化や電子署名を行う仕組みです。公開してよい鍵と、絶対に秘匿すべき秘密鍵を使い分けます。

🔹 AIを守る側のツールとしても活用する

AIは攻撃者に悪用され得る一方、利用者自身がセキュリティを考えるための補助ツールにもなります。保有額、利用端末、知識、生活環境、相続の必要性、取引頻度などを整理し、AIに質問することで、検討すべきリスクや保管方法の候補を洗い出すことは可能です。

Hoskinson氏自身も、AIに利用者の状況を整理させ、保管方法を検討させる用途や、インフラのペネトレーションテスト(セキュリティ脆弱性を洗い出すテスト)に活用する可能性に言及しました。一方で、AIの回答は入力内容や質問の仕方に左右されるため、鵜呑みにするべきではないとも述べています。

🔹 Open Wallet Standardとエージェント型ウォレットの展望

Hoskinson氏は、CardanoがOpen Wallet Standard(OWS)へ統合されたと述べました。原文ではOWSについて、x402、Privy、Coinbase AgentKit、Turnkey、WalletConnect v2、ERC-4337、CAIP、Solana Wallet Standardなど、複数の関連技術やプロジェクトを組み合わせるスタックとして説明しています。

また同氏は、WingRidersがCardano向けの統合を実施したと述べました。CardanoのOWS統合状況、対応範囲、各参加プロジェクトの一覧は変動し得るため、OWSおよびCardano関連の公式発表で確認が必要です(※要確認)。

同氏は、将来はAIエージェントがウォレットを持ち、ユーザーの代理で支払いや取引を行う「エージェント型ウォレット」が増えると予測しています。その際には、AIエージェントを動かす環境、資産の利用権限、秘密情報の保護、支出制限、監査可能性が重要になります。

Confidential Computing

信頼できる実行環境(TEE)などを利用し、クラウドやサーバー上でデータを処理している最中も保護する技術領域です。運営者やホスト環境からも重要データを見えにくくすることを目指します。

【まとめ】

今回のメッセージの核心は、暗号資産セキュリティに「絶対安全な単一解」はなく、保有額や利用環境に応じた多層防御が必要だという点です。少額であれば利便性を優先する場面もありますが、資産額が大きくなるほど、ハードウェアウォレット、認証要素の追加、異種デバイスによるマルチシグ、信頼できるカストディ、復旧設計を組み合わせる重要性が増します。

Midnightは、ZK、SSI、MPC、選択的開示を通じて、自己保管のプライバシーを維持しながら、保険・復旧・コンプライアンスにも対応できる未来を目指しているとHoskinson氏は説明しました。AIによる攻撃が高度化する時代だからこそ、利用者側も「自分の資産規模に見合う守り方」を見直すことが重要です。

※最後までお読みいただきありがとうございました。可能な限り正確にまとめていますが、AI要約のため誤りが含まれる場合があります。ご了承ください。
※内容には細心の注意を払っていますが、最終的な対応や判断について責任を負うものではありません。最新の公式情報もあわせてご確認ください。

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