スマートコントラクトの次へ:
Midnight Cityと「Night Frame」が描くAIエージェント時代

【概要】

東京・八芳園で開催されたMidnight Cityのイベントで、Charles Hoskinson氏は「スマートコントラクトの次に来るもの」として、AIエージェントが自律的に活動する新たなコンピューティング基盤の構想を語りました。中心となるのは、個人が所有・管理する常時稼働型のプライベートな実行環境「Night Frame」と、そのエージェントたちが活動する世界としての「Midnight City」です。
同氏は、プライバシー、コンプライアンス、抽象化、エージェント型金融を次世代ブロックチェーンの重要な要素として挙げ、Midnightがそれらを支える基盤になると説明しました。さらに、AIが人間のデータや資産を搾取するのではなく、本人の意図に従って働くためには、自己主権型のアイデンティティ、ウォレット、プライバシー保護が不可欠だと強調しました。

AIエージェント とは

目標に向けて情報を収集し、計画を立て、必要なツールやサービスを使いながら自律的に行動するAIです。単に質問へ答えるチャットボットよりも、継続的なタスク実行を担う存在として期待されています。

 

 【解説】

Hoskinson氏は、暗号資産の歴史を世代ごとの進化として振り返りました。Bitcoinはピア・ツー・ピアで価値を送る仕組みを実現し、Ethereumはプログラム可能な取引やスマートコントラクトを広めました。そしてCardanoは、UTXOモデル、ネイティブアセット、自己管理、分散性などを重視する「第3世代」の取り組みとして位置付けられています。

同氏が強調したのは、新しい世代が過去の技術を捨てるのではなく、その価値を受け継ぐという点です。Bitcoinが掲げた自己管理、検証可能性、耐検閲性といった原則は、次世代のAI・ブロックチェーン環境においても重要な基盤になるというのが同氏の見解です。

Hoskinson氏は、次世代ブロックチェーンに必要な要素として、プライバシー、コンプライアンス、抽象化、そしてエージェント型の仕組みを提示しました。

プライバシーは、企業活動や個人の医療情報など、すべてを公開台帳に記録できないという現実的な課題に対応するためのものです。一方、コンプライアンスは、株式、税金、会員資格、ロイヤルティポイントなど、規制や利用条件がある資産を扱ううえで必要になる要素として説明されました。

コンプライアンス とは

法律、規制、社内ルール、利用条件などを守ることです。ブロックチェーン上で金融商品や会員限定サービスを扱うには、利用者の資格確認や税務処理などへの対応が求められる場合があります。

また、抽象化とは、利用者が「どのブロックチェーンを使っているか」を強く意識せずに済む体験を目指す考え方です。メールアドレスのように分かりやすい識別子を使い、複数のチェーン、資産、サービスを横断的に利用できる状態が理想として語られました。

抽象化 とは

複雑な内部構造を利用者から見えにくくし、簡単に使える形にする考え方です。ここでは、Cardano・Bitcoin・Ethereumなどの違いを意識せず、複数のネットワークや資産を扱える体験を指します。

 

講演の中心となったのが「Night Frame」です。これは単なるスマートコントラクトではなく、ユーザーのために常時稼働し、プライバシーを守りながら本人の意図に沿って行動するコンピュータ環境として説明されました。

Night Frameには、本人やエージェントを識別する「Identity」、利用者の望みを理解する「Intention」、目的を実現するための「Intelligence」、そして利用者ごとに最適化される「Personal」という要素があるとされています。重要なのは、AIが命令を機械的に実行するだけでなく、利用者の状況や好みを理解し、目的を達成する方法を考える存在になるというビジョンです。

Night Frame についてもう少し詳しく

Hoskinson氏は、Night Frameを「プライベートで常時稼働し、利用者の意図に従い、検証可能なコンピュータ」と説明しました。そのうえで「従来のコンピュータとは何が違うのか」を示すために、4つの性質を挙げています。

  1. Identity(アイデンティティ)

従来のコンピュータは、使っている人が誰かをあまり気にしません。Night Frameは、利用者本人を識別でき、さらにNight Frame自身も固有のアイデンティティを持つとされています。

・本人であることを証明できるため、なりすましやハッキングを防ぎやすくなる
・講演の後半では、エージェントは利用者本人と同じアイデンティティを持つとも述べられ、Midnight Passportがその基盤として紹介されました
・買い物や契約をエージェントが行う場合でも、「その決定をしたのは本人である」と示せることが重要

2. Intention(意図)

通常のコンピュータは「言われたとおりのこと」を実行します。Night Frameは、利用者が「言ったこと」ではなく「望んでいること」を理解するという考え方です。

例:「この日この銘柄をこの価格で買え」ではなく、「お金を増やしたい」と伝える
例:「航空券を取りたい」と伝えれば、細かい手順は指示しなくてよい
「何をしたいか(what)」は人間が決め、「どうやるか(how)」はエージェントが考える、という役割分担です

講演では、ウォレットを持たせるだけでは不十分で、「何のために、どこにお金を使うか」を理解していることが必要だと述べられていました。

  1. Intelligence(知性)

Intentionが「望みを理解すること」だとすれば、Intelligenceはその目標を達成する方法を考え、実行できることです。

旅行の例では、杖を使っている、子ども2人を連れている、夜は移動できない、4時間以上のフライトは足元の広い席が必要、といった条件を踏まえて手配する
必要なら他のエージェントに協力を求めたり、スキルを購入・レンタルしたりして問題を解決する
大規模言語モデルを搭載しているため、AIの能力向上とともにNight Frameの能力も上がっていく

4. Personal(個人的であること)

Personalは、利用者について深く知っており、その人専用に動くという意味です。

講演では「靴を買ってきて」という例えが使われました。見ず知らずの人に頼んでもうまくいかず、足の形、性別、住んでいる場所、好みなどを知っている人でなければ適切に選べません。同様に、AIが本当に役立つには利用者の情報を知る必要があります。

なぜ「所有」が重要なのか

ここが講演の核心です。Hoskinson氏は、既存のパーソナルAIにもIntelligenceやPersonalの性質はあるが、アイデンティティもデータも大企業が握っており、利用者が所有していないと指摘しました。

・AIが利用者を深く知るほど便利になる
・しかし、その情報をOpenAIなどの大企業に預けることには懸念がある
・だからこそ、AIに自分を深く知ってもらうには、そのAIを自分で所有していなければならない、という趣旨の主張でした

この主張が、Night Frameを非カストディアル(本人が鍵とデータを管理する)、分散型、検閲耐性のある設計にする、という話につながっています。

 

Night Frameの活用例として、Toyotaと電池メーカーCATLのような企業間連携が挙げられました。企業が共同開発を進める際には、技術情報や知的財産を共有しながら、不正利用や情報流出を防ぐ必要があります。

また、海外旅行中にけがをして病院を受診する場合には、必要な医療記録だけを安全に提示し、その後にデータが不必要に保持・流用されない仕組みが求められます。Hoskinson氏は、こうした課題は企業の知財保護と本質的に共通しており、「一緒に仕事をしたいが、相手を信頼できるのか」という悩みにどう応えるかが重要だと述べました。

講演では、Night Frameによって実現し得る例として、Hoskinson氏が「量子マネー」と呼ぶ構想も紹介されました。これは量子コンピュータを用いる既存の量子マネー研究そのものではなく、端末内の唯一の秘密鍵と安全な削除の証明を用いて、現金のように価値を移転するという講演内のアイデアです。

たとえばAliceがBobに支払う際、Aliceの端末にある価値をBobの端末へ移し、Alice側のコピーを安全に削除できれば、二重支払いを防ぎつつ、オフラインかつプライベートに送金できるという構想です。将来的には通信環境や電力供給が不安定な地域でも利用できる可能性があるものとして、金融サービスにアクセスしにくい人々への支援との関係も語られました。

Midnight Cityは、Night Frameを持つAIエージェントが活動し、学び、互いに協力するための「エージェント文明」として紹介されました。公式説明でも、エージェントが社会的な文脈で交流・成長し、Midnightの技術スタックを検証するための環境として位置付けられています。画面内を歩くアバターは、アイデンティティ、ウォレット、AIモデル、プライバシー技術を備えたエージェントとして機能することが構想されています。

EthereumがdAppやスマートコントラクトの可能性を試すサンドボックスだったように、Midnight CityもAIエージェントの経済圏や社会的な振る舞いを試す場になると説明されました。利用者は自分のエージェントを通じて、新たなサービス、取引、協働の形を体験することが想定されています。

Midnight Cityでは、Open Wallet Standard(OWS)の統合や、エージェントによる取引機能を段階的に実装していく計画が語られました。OWSは、AIエージェントや開発ツールが暗号資産ウォレットへ安全にアクセスし、ポリシーに基づいて署名・支払いを行うためのオープンな仕様です。講演では、ユーザーが資金、戦略、権限を管理したうえで、エージェントが他のブロックチェーンやオフチェーンのインフラ上で取引を行う未来が想定されました。

Open Wallet Standard とは

AIエージェントやツールが、自分のPCに保管された暗号資産ウォレットを共通の方法で利用するためのオープンな仕様です。秘密鍵をエージェントへ直接渡さず、利用可能なチェーン、支出上限、許可先などのポリシーを設定したうえで署名処理を行うことを目指しています。

また、エージェントが必要な能力を「スキル」として市場から調達する構想も紹介されました。たとえば、調査、データ分析、ハードウェア開発、ウェブ制作などの専門スキルを、エージェントが目的に応じて利用・購入・レンタルする世界です。これは、個人や企業が開発したAIスキルを収益化できる、新しいSaaSモデルになり得るという見通しとして語られました。

SaaS とは

Software as a Serviceの略です。ソフトウェアを購入して所有するのではなく、インターネット経由で必要な期間・機能だけ利用する提供形態です。

 

Midnight Cityのロードマップでは、「Bring Your Own Intelligence」という考え方も重要な要素として示されました。これは、スマートフォン、ブラウザ、ゲーム機など、利用者がすでに持っているデバイス上でエージェントを動かせるようにする構想です。

スマートフォンは日中や睡眠中に計算能力を十分に使われないことが多く、世界中には膨大な未活用のコンピューティング資源があります。Hoskinson氏は、これらをネットワーク化すれば、Uberが車の空き時間を活用し、Airbnbが空き部屋を活用したように、大規模な分散コンピューティング市場を作れる可能性があると述べました。

講演を通じて繰り返し語られたのは、「AIは誰のために働くのか」という問いです。AIが個人の好み、健康状態、家族関係、行動履歴を知るほど便利になる一方で、その情報を大企業に預けきりにすることには大きな懸念があります。

そのためHoskinson氏は、AIエージェントが真に利用者のために機能するには、ユーザー自身がエージェント、データ、アイデンティティ、ウォレットを所有しなければならないと主張しました。エージェントは企業の広告収益やデータ収集のためではなく、本人の時間、資産、プライバシーを守るために動くべきだという考え方です。

Hoskinson氏は、スマートフォンやSNSによって、人々が常に画面を見続ける生活になったことにも触れました。そのうえで、AIエージェントが日常的な手続き、写真整理、情報収集、買い物、連絡、旅行計画などを代行できれば、人間は家族や友人との時間、目の前の体験に意識を戻せると語りました。

たとえば旅行中に、エージェントやロボットが写真・動画を撮影し、家族向けに編集したうえで、必要に応じて離れて暮らす祖父母へメッセージ付きで送るような未来像が紹介されました。また、個人の好みを反映したデジタルツイン同士が交流することで、新たな友人関係やコミュニティ形成を支援する可能性にも言及しています。

デジタルツイン とは

現実の人・物・環境の特徴や状態をデジタル上に再現したモデルです。ここでは、個人の好みや行動傾向を反映し、本人の代理として活動する存在を指しています。

 

Midnight Cityは、難解になりがちな暗号技術やAI技術を、親しみやすい都市やアバターという形で体験できるようにする試みでもあります。利用者がリスクの少ない環境でエージェントと関わり、技術への理解や信頼を少しずつ育てていくことが狙いとして語られました。

イベントでは、Midnight Passportの初期版を年末頃に提供し、その後も機能を段階的に追加していく計画が共有されました。また、エージェントのアイデンティティやウォレット機能、エージェント取引、スキル市場などを順次展開していく方針も示されました。さらに、参加者が「ビーズ」で自分のエージェントを作り、Midnight Cityに参加させる企画も案内され、技術をより身近に感じてもらう工夫が行われました。

Midnight Passport とは

Midnight CityおよびMidnightの世界で、ユーザーやエージェントのアイデンティティ基盤として構想されている仕組みです。講演では、年末頃から初期版を展開する計画が述べられました。

ビーズ(Hama beads) とは

小さな筒状のプラスチックのビーズです。専用のペグボード(突起のついた板)に並べて絵柄を作り、その上にアイロンペーパーを当ててアイロンの熱で溶かして固定すると、ビーズ同士がくっついて一枚のプレートになります。ドット絵のような見た目に仕上がるため、ゲームのキャラクターなどを作る遊びとして人気があります。日本では「アイロンビーズ」と呼ばれることも多いです。

講演での使われ方

講演の最後で、Gem Ozan氏が次のように案内していました。

・ハマビーズは非常に小さなプラスチックのピースで、並べて小さなアイロンで固めることで、自分のエージェントを物理的な形で作れる
・会場の上階(食事やネットワーキングセッションの場)で提供される
・「Midnight City Tokyo」の帽子をかぶったスタッフが、エージェント作りを手伝い、Midnight Cityの中にそのエージェントを「スポーン(出現)」させる

 

【まとめ】

今回の講演では、MidnightとMidnight Cityが、AIエージェント時代におけるプライバシー、自己主権、資産管理、協働のあり方を再設計しようとしていることが示されました。Night Frameは、スマートコントラクトの次に来る概念として、個人が所有するAIエージェントの実行環境を目指す構想です。
その実現には、Cardanoを含む既存のブロックチェーンが築いてきた分散性、自己管理、検証可能性といった原則が欠かせません。AIを便利な道具にとどめず、人々の時間と主体性を取り戻すパートナーにできるかどうかは、誰がデータ、アイデンティティ、ウォレットを所有するのかにかかっているのかもしれません。

※最後までお読みいただきありがとうございました。可能な限り正確にまとめていますが、AI要約のため誤りが含まれる場合があります。ご了承ください。
※内容には細心の注意を払っていますが、最終的な対応や判断について責任を負うものではありません。最新の公式情報もあわせてご確認ください。

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