Wanchainブリッジ事案、Midnightは無傷と公式声明

【概要】

 先日のCardano⇔BNBスマートチェーン間のブリッジ「WanChain」がハッキングされる事件について、これを受けCardano創設者のCharles Hoskinson氏は、なぜブリッジハックが業界で繰り返されるのか、その構造的な原因と、Cardanoの研究チームが発表した形式的検証論文、そしてプライバシー保護型ブロックチェーン「Midnight」がどのように解決策になり得るのかを、ホワイトボード解説動画で語りました。

【解説】

Hoskinson氏によれば、過去36カ月間でブリッジハックは暗号資産業界における資金流出額トップの原因であり続けています。「暗号資産自体に欠陥があるのか」「開発者が未熟なのか」という疑問に対し、ブリッジは「異なるルールで動く2つの世界をつなぐ」インフラであるため、攻撃対象領域が単一チェーンより格段に広くなる点が根本的なリスクであると説明します。

「ブリッジ」とは(クリック・タップで解説)

異なるブロックチェーン同士をつなぎ、資産や情報をやり取りできるようにする仕組みのこと。
例:Cardano上のNight(cNight)をBinance Smart Chain側でも使えるようにする

今回の動画のきっかけとなったのが、Cardano研究チーム(Agalos氏ら)が発表した43ページに及ぶ論文です。ブリッジの安全性を数学的に定義し、「1つ1つの機能をどう組み合わせても、全体としての安全性が崩れない」ということまで数学的に確認を行った、業界で初めての本格的な形式的分析だとされています。TLAによるモデル検査とQuintによる形式化(※)の両方を含む珍しい構成で、エストニア・フランス・スコットランドなど多国籍の研究者(Microsoft Researchの研究者も参加)によって執筆されました。新しくブリッジを設計する人にとっても、この論文は「基準となる資料」になり得ます。

(※)「TLAによるモデル検査とQuintによる形式化」とは(クリック・タップで解説)

どちらも「システムの動きをコンピューターに総当たりでシミュレーションさせて、バグや抜け穴がないか自動チェックする」ための道具。通常の数式的な証明(理論上は正しい)だけでなく、コンピューターに実際にシナリオを総当たりさせるチェックまで行ったという二重チェック体制で、学術論文としては非常に珍しい。

論文リンク(https://eprint.iacr.org/2026/292)

CardanoにいるボブとBinance Smart Chainチェーン(以下BSC)にいるアリスを例に説明されました。ボブが”cNight”をロックすると、その証跡(レシート)とBSC側の受取アドレスがブリッジを通じてBSCに送られ、1対1でペグされた合成資産”BSC上のNight”がミントされます。逆方向では、Aliceが”BSC上のNight”を焼却して発行された証跡をブリッジが検証し、対応する”cNight”がCardano側でアンロックされます。

ブリッジには、

(1) Cardano側のオンチェーンPlutusコントラクト
(2) BSC側のオンチェーンSolidityコントラクト
(3) BSC側オフチェーンインフラ
(4) Cardano側オフチェーンインフラ

という4つの攻撃対象領域が存在します。特にスマートコントラクトのアップグレードを支える管理者鍵(admin keys)が乗っ取られると、資産の送り先を書き換えられてしまう危険性があります。また、オンチェーン(公開領域)での不正は外部の攻撃者による脆弱性の悪用、オフチェーン(非公開領域)での不正は内部関係者による不正である場合が多いとされています。

従来のブリッジは「仲介者」、つまり「ブリッジ運営者」という第三者が介在していました。

  • Bobが「cNightをロックしました」と主張する
  • ブリッジ運営者が「本当か?」とチェーンを見に行って確認する
  • 確認できたら、運営者(または運営者が動かす仕組み)がBSC側に「ミントしていいよ」と伝える

「本当にロックされているかどうかを判断する係」が必ず必要だったわけです。そして、この「係」こそが、前述した4つの攻撃対象領域の1つであり、実際に今回ハッキングされたのもこの部分でした。

  • Bob自身が「私は確かにcNightをロックしました」ということを、数式で証明できる”証明書”を自分のコンピューターで作る
  • その証明書を、BSC側にある検証用のスマートコントラクト(検証コントラクト)にただ提出する
  • 検証コントラクトは、数式的に「この証明書が本物かどうか」を自動で判定できる
  • 本物だと判定されたら、そのまま”BSC上のNight”が自動でミントされる

このように、「本当にロックされているか確認する係(運営者)」がまるごと不要になり、「係を買収する」「係のサーバーをハッキングする」といった、これまでの攻撃の入り口そのものが存在しなくなります

例えるなら、今までのブリッジは「銀行の窓口係にIDを見せて、本人確認してもらってからお金を移してもらう」仕組みでした。ZKブリッジは「本人確認済みの証明書(マイナンバーカードのようなもの)を自動改札にかざすだけで通れる」仕組みに近いです。窓口係(=買収やハッキングの標的になり得る人)がいなくなる、というのがポイントです。

Midnightのようなゼロ知識証明(ZK)基盤があれば、ブリッジ運営者を介さずに利用者自身が証明を生成し、検証スマートコントラクトへ提出するだけで資産を移動できる「トラストレス」な設計が可能になります。さらに、ZKと従来の署名方式など複数方式を組み合わせる「マルチ設計」にすることで、片方の仕組みに欠陥が生じても資金が盗まれる「安全性」は保たれ、せいぜい影響は一時的な停止にとどまるという考え方が示されました。

「カストディアル型」「非カストディアル型」とは(クリック・タップで解説)

カストディアル型:資産を取引所など第三者管理下に預ける方式で、自分の資産を自分でコントロールできなくなる
非カストディアル型:利用者自身が双方のロック解除権限を保持する方式

攻撃発生時にはまず、DEXやレンディングプロトコルへ即座に警告を伝える「早期警戒システム」が必要だと説明されました。攻撃者は盗んだ資産をDEXで換金したり、ステーブルコインで借入を行って資金洗浄することが多いため、関連プロトコルへ迅速に危険情報を伝播できれば被害を最小化できるとしています。さらに、緊急時に限定的な権限で資金保護に動ける「ホワイトハットライセンス」の仕組みと、それを可能にする身元証明基盤「Midnight Passport」の重要性が語られました。Midnight Passportは選択的開示型のゼロ知識証明を用い、ウォレットとは分離された安全な形で身元を証明できる設計になっているとのことです。

ホワイトハットライセンスへの同意の証明をしたり、保護対象となった資産が自分のものだという証明をしたりするのが「Midnight Passport」です。

「ホワイトハットライセンス」とは(クリック・タップで解説)

ホワイトハット…脆弱性を見つける技術は同じでも、それを悪用せず、システムを守る側に使う人
非カストディアル型のウォレットは、通常「自己責任」が原則で、盗まれても誰も助けてくれません。そこで、ウォレット作成時に「緊急時にホワイトハットが介入して資産を守ることを許可する」というチェックボックスを設けます。そして、チェックを入れた利用者の資産だけが、攻撃発生時にホワイトハットによる保護対象になります。チェックを入れなければ対象外です。

欧州の規制などを背景に、暗号資産を完全カストディアル環境に集約すべきだという議論が強まる中、Hoskinson氏は非カストディアル環境を維持したまま保険や紛失時対応などの消費者保護を組み込む「第三の選択肢」の重要性を強調しています。ウォレット作成時に保険加入やホワイトハット保護の可否を任意で選べる設計にすることで、利用者自身が管理方法を選択できる仕組みを目指しているとのことです。

今回のインシデントでは、cNight自体やCardano側スマートコントラクトはハックされておらず、サードパーティのブリッジ(WanChain)側が侵害されたとされています。流出規模は約5億Night相当(イーサリアム創設時の資金調達額のおよそ半分規模)とされていますが、ネットワーク自体は健全に稼働を続けており、市場価格は時間をかけて回復していく見通しが示されました。

【まとめ】

ブリッジハックは単一の欠陥ではなく、複数チェーン・複数コンポーネントにまたがる構造的なリスクです。今回の事件はサードパーティブリッジ側の侵害であり、Cardano本体やcNightの安全性そのものは損なわれていません。今後は、形式的検証に裏付けられたゼロ知識証明ベースの「マルチ設計」、早期警戒システム、ホワイトハットライセンス、そして身元証明基盤(Midnight Passport)を組み合わせることで、非カストディアルの利点を保ちながら消費者保護を実現する方向性が示されています。

※最後までお読みいただきありがとうございました。可能な限り正確にまとめていますが、AI要約のため誤りが含まれる場合があります。ご了承ください。
※内容には細心の注意を払っていますが、最終的な対応や判断について責任を負うものではありません。最新の公式情報もあわせてご確認ください。

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