Hydra
Cardanoの処理能力を大幅に向上するデータ形式

現状の問題点

暗号資産とブロックチェーンが世界に広がるにつれて、使用者・使用用途は増えていくでしょう。たくさんの取引データによって、ブロックに書き込めるデータの容量の限界を超えてしまうと、送金スピードが遅くなってしまいます。このような問題のことを「スケーラビリティ問題」と言います。クレジットカードのように、瞬時に決済ができなければ、実生活での利用はできません。将来的には30億人の財布を目指すCardanoも、何らかの対策が必要です。

Hydraの利点

(1)クレジットカードのVISAは、1 秒あたり約 2,000件(2,000TPS)の 決済処理ができるのに対し、一般的なブロックチェーンでは、多くとも数百TPSしか処理できません。 しかしCardanoはHydra[Head]と呼ばれる規格を導入することで、分散化されたステークプール1つ1つが1秒あたり約 1,000 TPS を処理できるようになります。単純に計算すると、1000個のステークプールがHydraを導入することで、1000TPS×1000個=1,000,000TPSを1秒あたりに処理できます。これはクレジットカードの決済処理能力をはるかに超える数値です。
(2)Hydraはトランザクションだけでなく、スマートコントラクトの実行も可能にします。分散型取引所を入れて実際に交換するなど、あらゆる種類の応用が利くようになり、他のシステムとの相互運用が可能になります。例えば、ビットコインとカルダノ、カルダノとイーサリアムの資産移動がしやすくなったり、マイクロトランザクション(ゲームで少額課金したアイテムや機能をユーザーに販売するシステムなど)、投票、保険などの高頻度かつ汎用性のあるアプリの開発が可能になったりします。

Hydraの原理(難しいので初心者の方は飛ばしてください)

▲cardanians.io Hydra: Cardano scalability solution より引用

Hydraは、Cardanoのブロックチェーン(通常のネットワークで、以下レイヤー1とします)とは別の「ステートチャネル」と呼ばれるネットワーク(以下、レイヤー2)を使用します。通常、トランザクションのデータはレイヤー1だけを使用するのですが、レイヤー2も使用することでメインとなるレイヤー1で処理する情報を減らすことができ、結果的に多くのトランザクションデータを扱うことができます。したがって、送金遅延が減り、瞬時に決済や契約などができるようになります。
ちなみにビットコインやイーサリアムなどの他の暗号資産でもこの技術が使用されています。例えば、ビットコインの場合は、「ビットコインライトニング」と名付けられています。
ただし一般的には、レイヤー1とレイヤー2のデータ転送にはコード変換が必要で、これにより高度なセキュリティが失われます。それに対して、Hydraの場合は、レイヤー1とレイヤー2で同じコードを使用しています。これが論文のタイトルである「同型のステートチャネル(Isomorphic State Channels)」と言われる理由です。これは、無駄なコード変換が無く、セキュリティも保たれます。

HydraとCardano

▲全61ページにもわたるHydra (Head)の論文

IOHKやエディンバラ大学などが研究を開始してから5年間、20人以上の科学者やエンジニアがフルタイムで研究を続け、1000件以上の論文を発表してきました。Hydra は、その論文の集大成で、2020年3月に一般公開されました。

Hydraは、Ouroboros プロトコルと Cardano 台帳と組み合わせて設計されていますが、Cardanoと特定の特徴を共有する限り、他のシステムでも使用できます。
なお、この記事ではHydraの中でも「Head」というデータ形式のみ扱っていますが、Hydraは「Head」「Tail」「CrossHeadandTail」という3つの形式があります。現在の論文では「Head」のみ見ることができます。

Hydraのユースケース

Hydraのユースケースはただ1つ、「スケーラビリティ問題の解決」です。
2021年の夏~秋にはAlonzoハードフォークによって、Cardanoにスマートコントラクトが導入されます。またアフリカで「Atala PRISM」「ADAPay」をはじめとする各種プロジェクトが進行していたり、Catalystの投票によってCardanoブロックチェーンを用いた各種アプリやサービスが検討されています。今後、Cardanoが世界に普及するにつれて考えなければならないスケーラビリティ問題に対し、その大きな対策となります。

おわりに

Hydraは、「ステーキング」や「スマートコントラクト」と比べれば、その利点が実生活で実感しにくいので、存在が薄く見えます。しかし、決済やスマートコントラクトの処理能力をさらに強める縁の下の力持ちと言える存在と言えそうです。
私は過去に、ビットコインの売買をしていた時に、「ビットコインの送金が遅い、不安だ」と感じることが度々ありました。特に、価格が大きく上下しているときほど、送金速度が遅く不安になっていました。みなさんご存じのように、現状ではCardanoの送金時間はとても速いですが、トランザクションがより増加してもHydraがあれば、送金時間の遅延は生じません。
流通量が多い暗号資産は必ず「スケーラビリティ問題」に直面します。2021年9月の段階でスマートコントラクトも実装され、数多くのパートナー企業やプラットフォームが今後多くのプロジェクトを実施することを考慮すると、Cardanoは今後広く普及していくでしょう。「スケーラビリティ問題」の対策をすでに開発しているIOHKは、幅広い分野で実生活への応用を考えてくれています。今後の発展がとても楽しみです。

【参考文献】(クリックで転送)
(1)Hydra: Cardano scalability solution
(2)Twitter:榊原(@sakakibara1JPN)さんによるHydraの説明
(3)CoinPost:カルダノ、「Hydra」をローンチ 圧倒的な処理速度を実現か
(4)IOHK:Enter the Hydra: scaling distributed ledgers, the evidence-based way
(5)Youtube:Cardano | What Is Hydra?

ご覧いただきありがとうございました。追記・訂正などありましたら、以下のコメント欄もしくはDMやお問い合わせフォームから連絡をお願いします。

どこよりも、親しみやすい説明で。

この記事が気に入りましたら、ステーキングの委任はぜひAichi/Tokai Stake Poolへお願いします。
1ADAからでもOKです!励みになります。

関連記事

  • 関連記事
  • おすすめ記事
  • 特集記事

コメント

この記事へのトラックバックはありません。

TOP